ということで、年が明けてまずしたことは、エンパイアステートビルに上ったことだったんですが、前日、つまり2日に、そのチケットを買いに行ったんです。なんせ、Aクラス観光スポットのエンパイアですから、チケットを買うのも一苦労。エンパイアステートビルの外まで続く長い列に並んで、1時間くらいかけてやっとチケットを買う感じです。エクスプレスパスを買うと、列を飛ばすことができるんですが、パスは$43!なんかちょっと馬鹿馬鹿しい。普通のチケットも$20するんですけど。
年が明けてずっと晴天続きだったので、長蛇の列を見越してまずチケットを買って、日を改めて上ろうということにしました。(結局、上るのもチケットのラインに並ばなくちゃいけなかったので大差なかったんですが‥。)
そこで、年明け早々かなり嫌な思いをしました。
エンパイアステートビルの半ブロックくらい外の列に並んだとき、私の後ろには5人くらいの観光客の家族連れが並んだんですが、そのときからなんか嫌な予感。お父さんと思われるおじさんや、ティーンの年頃の娘なんかが気づいてか気づかずか私のうしろにぶつかったりして、まったく、はしゃぎたい気持ちはわかるけど、マナーなってないなあと思ってたんです。
そして、中に入ったとき、エスカレーターの前で列が切られてしばらく待たされて、「はい、行っていいよ」と通されたとき、お父さんがすかさず私の前を
突っ切って、私の前に並びました。
なんだこいつ。ムカつく。超ムカつく。
うしろの家族は私の後ろに残され、私はお父さんと他の家族に挟まれる形に。
次のセクションではロープがくねくねと張られていて、そのロープの通りに列が進むことになってたんですが、列が大幅に進んだところで、今度は残りの家族がロープをまたいで私を飛び越してお父さんの後ろに並んだんです。
え‥。
しかも娘や息子たちは「えっへへ〜
」みたいな顔して私の前を横切る。
私はひとりだったんで、ちょっと泣きそうでした。くやしくて。
こんなとき、大声出してスタッフを呼んだり、「ちょっとアンタ!」と諭すのも、長〜い列の中でまた面倒だし、とにかく黙って見過ごすしかなかったのです。
ひょこひょこついてきた父親や子供たちが何をしたか知らなそうなお母さんが家族の一番後ろについたので、なにげに「どちらからですか」と聞いたら、「スウェーデンからです」とにこやかに答えました。一気にスウェーデン人嫌いになりました。
お父さんの顔、最初見たときから気に入らなかったんですが、なんていうか、がっしりしてて、けっこう混んでる電車で2つ目の駅で降りるのに必死に席探すひとみたいな顔ですね。
何が悔しかったって、まず私という人間を、ゴミと扱ったことですね。
私はひとりだったし、背も低いし、待っている間ずっと本を読んでいて、「こんな奴ひとりくらい」と思われたのがひしひしと感じられて、ひとり対大勢で有無を言わせぬみたいな態度で、ブッシュ政権でした。
NYにいると、こういうことはけっこうあるんですが、いわゆるニューヨーカーはこういうことしません。日本では決して起こらないようなこんなことで、嫌な思いをすることはけっこうありますが、大概は「NYなんてどうでもいい」という移民や観光客、あるいはうちの近所のゲトー住民などと接するとこういうことがあります。
スウェーデン人がみんなこんな感じってわけではないですが、旅行に行った先でこういうことをすると、国のイメージ下がっちゃいますよね。マナーは言うまでもなくどこでも大事です。
しかしムカつく。
そして、次の日、今度はチケット売り場を過ぎたセクションでまた長い列に並んでいました。これは本当に長い列なんです‥。下から上まで。
そこはロープが張られた横に、スタッフが通る細い通路があって、あるとき後ろからアメリカ人の家族がそこを通って列を通り越して次のセクションに入りました。いかにも中西部から来ましたみたいなトレーナーにトレパン姿の母親が、子供たちに「ほら、こっちおいで」と。それをみんな横目で見て、私の前に並んでいた中国人の家族連れは、それまでわくわくにこにこ調だったのがそれを見て急に困惑顔になり、私はそれを見て胸が痛くなりました。前日の件があったので、「またかい‥」と私はあきらめモードだったんですが、その中国人ファミリーの困り顔がとっても悲しくて、またむらむらと怒りが。
みんなそれぞれ$20ものお金を払って、なかにはもう2度と見に来れないかもしれない最高の眺めを楽しみに長い長い列に並んで、わくわくしながら待っているのに、それを一気にぶちこわすような行為をする傍若無人さは、犯罪です。
私はちょうどそのとき、坂口安吾の「白痴」を読んでたんですが、戦時中の話で人間の「質」がどうだとか、、、トリップしちゃいました。「純潔に対する貞節」、守らないといけません。下を見てたんじゃだめなんですよ‥。
そして、ようやく83階に上り、ようやく下を見ることができました。
風もびゅーびゅー吹いて寒かったです。でもそれまでの疲れも$20も吹き飛ぶような景色に、気分も爽快。
(続きを見る)